浅間山の写真
この写真は今から40年ほど前のものです。
一枚の写真が物語るものとは・・・
中学3年生になる直前の春休み。
私は銭湯でよく会う同級生Fとかねてより軽井沢へ行く打ち合わせをしていたんですが、その彼の親は子供同士でそんな遠くへ行くのは駄目だと反対し、私一人での旅となりました。
なぜ軽井沢へ行ったかといえば山が好きだということもありましたが、堀辰雄が描く「風立ちぬ」や「美しき村」など叙情的な小説が好きで、その舞台が軽井沢だったからです。
3月末だったと思いますが、上野発の鈍行に乗り軽井沢に着いたのは確か明け方前の3時前でした。
この当時の国鉄は今のJRと違い、地方の主要路線は真夜中でも列車が走っていました。
そういうこともあってか、寒風吹きすさぶというのに駅前には夜鳴き蕎麦の屋台が出ていました。
駅の待合室のストーブの火種が耐えていたこともあり、私はその屋台でかけ蕎麦を食べましたよ。
ボーっという音をたてながら火を燈すアセチレンガスの匂いも気にせず、かじかんだ手で丼を持ち、そして鼻水を啜りながら温かい蕎麦を食べたことを覚えています。
東の空が白み始めた4時過ぎから歩き出し、旧軽井沢を抜け白糸の滝を目指しました。
山道が始まって程なく三笠浄水場で、そこには犬がいましてね・・・
かなり大きなシェパードなんですが、私の姿に吠えるどころか尻尾を振って寄ってくるんです。
歩き疲れていたので、少しばかりその犬の相手をしましたよ。
といってもお互いに言葉が通じる訳もなく、
「番犬なのかい?」
「そう見える?」
「うん。シェパードやコリーは頭がいいから、番犬に飼われるし」
「ほとんど人がこないから、番をする必要ないんだよ」
「なるほどね・・・」
そんな会話をしたのかどうだか、いや、そういう雰囲気で犬と戯れましたっけ・・・
「じゃ、そろそろ行くからね」
私が歩き始めると、そのシェパードが後をついてきました。
それどころか白糸の滝はこっちだとばかりに私を先導するように先を行っては私が追いつくのを待っている。
そんなことを何回か繰り返してるうち、そのシェパードがいた浄水場からかなり離れてしまい、私が逆方向に手を示すんですが、なかなか戻ろうとしないんですよ。
今から思えば、そのシェパードは散歩の相手に私を選んだのではないだろうかと思っています。
白糸の滝へは山道をかなり行ったところにあり、まさに名前に違わぬ糸状の滝があっちこっちにありました。
そこからさらに浅間山麓の峰の茶屋まで歩きました。
着けば浅間山が目の前に鎮座し、その雄大な山体に圧倒され、しばし写真を撮るものの、昨夜からほとんど寝ていなかったので早々に駅に引き返しましたよ。
新学期が始まり同行するはずだったFに、往復30キロ以上歩いたことを告げると、そんなことやって何が面白いんだといわれましてね。
一緒に行くといってはずなのに随分な変わり身のことと、きょとんとなった私でした。
そればかりか、それからしばらくしてそのFが私を貶めることをし、あんな奴と軽井沢へ行かなくてよかったと思うほどでした。
そのFが大学時代彼が乗りまわしていた中古車を、私の幼馴染のKに売却したことがありました。
しょっちゅうエンストしてばかりのそのポンコツに、人のいいKは5万だからしょうがないかといってました。
私は軽井沢から帰った後の一件でFとは没交渉し、近所で会っても挨拶もしません。
Kとは明日のというより、もう今夜になりますが、飲みに行く予定です。
また、今週の土曜には高校時代の同窓会を兼ねた文化祭があります。
それを知ったのはつい先日のことで、参加申し込みが締め切られた後のことでしたので、とりあえずは文化祭だけでも行ってみようかと思っています。
40年という歳月はいろんなことがありました。
高校時代に知遇を得、20代半ば頃まではよく遊んでいたKSとは山にも一緒に行った仲です。
その彼とも疎遠になってから20年ほど経ちますが、それでも先日何とはなしに電話をかけると、懐かしがってくれる男です。
Kにしても一緒に旅行やドライブに行き、何回も寝食を共にしてきた仲です。
下の写真を見るたびにFという男を思い出さずにはいられませんが、彼とは好対照のいい友である2人のことが反射的に蘇ってくるんです。
それだけFという人間が、如何に薄汚い自己中心的な男だったかということになるんでしょうか・・・
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- 2008/11/02
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