空想は小説より奇なり

自作小説の連載です 立ち読み大歓迎です
その気になれば細分化も可能
爽やかな風はまるで秋のようで心地がいい。
ビールを飲むのもいいが飲めば眠くなり、また睡眠障害に陥ってしまう。
その前に今の鼓動にあう音楽を聴いておきたくなった。

軽快なテンポにあわせて思わず踊りだしたくなるような曲ばかりです。
いや、間違ってもゴーゴーダンスじゃありませんよ。
とくに最初の「True Love」は映像内容も良く、よく行ってた横浜のメロークラブやアーミーズバーなどのことが思い出されてきます。
若いときの行状が次々と浮かんできています(・・,)
 
Glenn Frey True Love


Chris Rea - On the beach


Whitney houston& Jermaine Jackson- Take Good Care Of My Heart


Tom Jones - Green Green Grass of Home


George Harrison - Cloud 9


The Ventures -- Pipeline


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はるか昔に見た映画に「Summer of '42 」おもいでの夏がある。

第二次大戦に夫を戦地に送ったドロシーという人妻とハーミーという思春期の少年の儚い恋を描いた物語。

これは物語ではあるがその実ノンフィクションでもあり、登場人物が実在したとのことで、この映画が公開されるや、ドロシーは私だと全米各地から名乗りをあげた女性がいたらしい。
実際にそういう体験をした女性がいたかもしれないが、多くはその映画の人気にあやかりたいというのが本音だったと思います。

さて、物語は年上との女性との一夜がクライマックスになってますが、そのときの音楽がせつなくて胸が苦しくなってしまいました。
喉が熱くなって息をすることもできない。
そのうえ涙が溢れ、慟哭にも似た状態でスクリーンを見入っていたものです。
その音楽の作曲は「シュルブールの雨傘」「風のささやき」などで知られるミッシェル・ルグランなのです。
このサントラ盤を持っていますが、レコードプレーヤーが壊れたままなので聞くこともできず、LP版は埃をかぶったままになっています。

あるとき何かしらで手に入れた音楽がこのオリジナルではない「Summer of '42」。
でも、これがルグランを凌ぐできのよさで、往年の名画をオーバーラップさせてくれました。
そこでユーチューブに拙い動画と共にアップしたのがこれです。

映画についての詳細はこちらで

Summer of  '42


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スレッドテーマ:音楽 音楽的ひとりごと
「赤飯」を校正しました。

当リンクの夢想国師でご覧いただければと思います。
短編小説なのでさらっと読めますよ〜〜〜

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スレッドテーマ:小説・文学 お知らせ

今日は仕事が休みでした。

ということで昨夜は3時ちかくまで起きていた。
12時を過ぎもう少しで「志村や。」が始まるかと思いきや、岩手付近でまたもや地震。
小泉純一郎と竹中平蔵が日本を駄目にしてからというもの、日本各地で地震が起きている。
三陸南地震、宮城県南部地震、新潟県中越沖地震叱り、そして今回の岩手地震。
小泉内閣のおかげで政治経済は混乱を極めている今。
それだけでも日本は瀕死状態なのに、本当に日本列島は沈没してしまうのではないだろうか?
と思わせるような大地震が相次いでいる。
これは、きっと神様が小泉内閣の犯した罪を禊をするように天誅を下してるのではないだろうか・・・

そんなきな臭いことはおいておき、今日は休みなので起きたのが昼過ぎ。
4時前に久しぶりの銭湯へ。
サウナで汗をかき1キロの減量。
さっぱりして脱衣所の縁台で小冊子を手にすると、子供達の作文が何篇かあった。
そのなかの一節に、「神様がくれた右うで」というのに心惹かれた。

僕は中学一年で転校した。
そのときどうして左利きなのかと聞かれた。
僕が生まれるとき母のお腹のなかで右腕がひっかかってうまく動かなくなったので、左利きになったというと、クラスの皆はそうなんだと納得してくれた。
それで苛めもなかった。

というような内容だったが、それを読んでて、なんていい作文だろうと思った。
苛めがどうのこうのではなく、この作者の子供は生まれ持ったハンデを神様がくれたと称してることに、彼の人間性が如実に表されてると思った。
こういう人間がいる限り、どんなに自分勝手で自己保身しか考えてない政治屋が市井を牛耳ろうと、日本は沈没しないだろうと思う次第だった。
おじさんたちも頑張るぞ!
と思わせてくれる文面に感謝したくなってしまった。

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スレッドテーマ:心と身体 心の持ち方
kimika_yoshino_022

私が中学時代読んだ武者小路実篤の「友情」は大磯や鎌倉が舞台でした。
今と違いそこは別荘地が多く、都内から近いとはいえ別荘での食事の支度や薪割などする爺やと婆やが同行します。
なぜかといえば、時は大正時代ですからね・・・
その別荘で何をするかといえば泳ぐのはもちろんのこと、絵を描いたり本を読んだりするわけです。

この時代は、女性がすぐに男性の褥になることなどありえません。
そんなことが他人に分かったとしたら、大変な騒ぎになるからです。
武者小路実篤や堀辰雄などを代表とする白樺派文学では、そういった男女の仲は常にプラトニックでストイックです。
内容は恋愛ものですから、今なら当然性描写があってもおかしくはない物語です。
ところが、間違ってもそういう場面はありません。
純文学にかこつけたエロ作家の石原慎太郎なら、大正時代であろうとなんだろうと、障子紙をペニスで突き破るなんてことを平気で書いたでしょうけどね・・・


さて、私がこの時代に生きてたとして、そして別荘に行ける身分だったら・・・

私なら山梨の勝沼に別荘を持ったでしょう。
酒好きならこの時代のワインは是非飲んでみたいからです。
湯村温泉で長逗留していた井伏鱒二や、御坂峠で富岳百景を書いていた太宰治。それに、増穂町で床屋をやりながら甲州商人を滑稽に描いていた熊王徳平。
そんな文士達とひがなワインを飲み、文壇論を交わしたかったからです。

その私の供といえば爺やと婆やではなく、上の画像の吉野公佳さんで、大正浪漫が似合うレトロな雰囲気を併せ持つ女性だ。

「ワインばかり飲んでないで、たまにはご飯を召し上がらないと身体に毒ですよ」
そんなことをいわれても、アワビの煮貝なんぞを肴に辛口の白葡萄酒をチビリチビリ。
その酒の毒気を抜きに、奥秩父の秘境といわれた西沢渓谷の沢で彼女と水遊びをしたり・・・

そんな夢想の世界から現実に戻れば、三連休だというのにどこにも行かず、睡眠障害で昼夜が逆転した一日を、のんべんだらりと過ごしていた。

まことに遺憾に存じてる現ですが・・・


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スレッドテーマ:旅行 山梨旅行
6 表裏比興の者

 吉村が田舎っぺの近所で出店させたら報奨金を割り増しするといったのが効いたのか、このところワンコインの出店数がかなり増えている。それは加盟料を下げたことによる相乗効果で、ついには風越駅前にも出店してきた。
「ごめんなさいね。村井さんと話をしてもここじゃあなたと競合することになるからっていわれたし。それでワンコインと話がとんとん拍子に決まっちゃって」
「いいのよ、そんなこと。風越のこの町のためにもなるし、いいじゃない。お互い、頑張りましょうよ」
「そういってくれると、助かるわ」
「花輪まで出してもらって、申し訳なくて」
「近所のよしみよ。隣同士ライバルだけど、私だって負けないわよ」
 ワンコインはホットドックとハンバーガーにヤキソバの食材と販売さえしてくれれば、それ以外の縛りはあまりない。
 それで、麻耶は三十坪ちかい店内に生活雑貨や食料品、それにラーメンも提供した。それに、夜は飲み客相手に焼鳥やちょっとした一品料理も出してるので、かなりの客が入っている。
 芳江の喜左衛門駅前店はその煽りを食っているが、本店に比べれば売上げの減少は差ほどでもなかった。
 喜左衛門本店は駅前支店とワンコインによるダブルパンチを見舞われていた。そればかりか、田舎っぺの加盟店がワンコインに鞍替えするという事実を知り、精神的にも衝撃を受けていた。
 
 野瀬はワンコインに店替えしたところを訪ねまわり、十日間の出張から風越に戻った。
 野瀬夫婦の住まいは村井達と同じ風雲舎に隣接したところだが、田舎っぺの事務所は駅そばの旧風越荘に置いたままだった。その門をくぐれば水が打たれたばかりで、真夏のような暑さも少しは薄らぐ感じだった。
「ご苦労様」
「ただいま。受注状況はどうだ」
「落ち込んでるわ」
「そうか・・・」
「ニ、三店ならいろんな対処法もあるけど、千店以上で全国に散らばってるっていうのは、手の打ちようがないわ」
「専務のお前がそんな弱気じゃ、社員に示しがつかないじゃないか。皆の前では、間違ってもそんなこというなよ」
 そうはいうものの、健太郎にしても打開策を見つけられないまま、宿でも寝付けない日々を送っていた。
 ワンコインはワンダラーで抱えている在庫のうち、賞味期限切れが迫った物を安く仕入れ、それを加盟店に卸している。それだけでなく、独自の問屋も抱えていた。卸値の安い物をスポットで加盟店に提供し、加盟店は売値を通常の半値近い額で販売できた。それは食材や清涼飲料だけでなく、雑貨にしても同様だった。その上縛りがないので、加盟店側としては気楽に商売ができるのだった。これでは、田舎っぺのお株を奪ってるといっても過言ではないだろう。
 
 加代が離婚して風越に舞い戻ってきた。子供さえも相手に親権を渡してのことだが、その顔に翳りはまったくなかった。
「三年ぶりに帰ってきたら、町営住宅ができてるっていうし、駅前のお店も増えて、ここも都会なみになってきたみたい」
「人口が増えるのはいいけど、この先どうなるのかしら」
 芳江は加代をさらし野に連れてきていた。
 由紀の店は町営住宅建築中、昼間も定食をやっていたことでかなりの儲けがあった。夫の浩二は遠海町の目抜き通りに鶏そばの店を出し、それも順調だった。その浩二は夜の八時には店を閉め、その後はさらし野を手伝っている。
「遠海のほうは昼間になると、ランチ難民ができるほど忙しい」
「へー。風越ももっと住人が増えればそうなるのかな」
「やーよ。この街はそんなふうになって欲しくないわ。下の農家なんか畑にマンション建てたりしてるけど、借り手がつかないっていってる。農家の人は農家をやってればいいのに、銀行や農協におだてられてそんなの造っちゃうのよ。ここにマンションなんていらないのに」
「そうはいうけど、分校を守るためには住人増やさなきゃいけないし、マンションとはいわないけど、外からきた人たちが住む家は必要じゃない」
「小椋とかに空き家がたくさんあるし、手入れすれば住めるのよ。そういうところに入ってもらえばいいのよ」
 芳江の住まいは駅から役場に向かった途中にある。周りは農家が多く田園風景に囲まれているが、商店は自転車ですぐのところにあるし、車ならありとあらゆる店に行ける環境だった。そんなところに鉄筋コンクリートのマンションができれば、風情がなくなるだろうと不満をいってるのだ。
「難しい問題ね。あっちが立てばこちらが立たず。上手い方法あればいいけど」
「やーね。あたしったら、皆に愚痴こぼしてるわ。今夜は加代ちゃんの里帰りを祝うつもりだったのに」
「あたしはバツイチだし、お祝いっていうのもね・・・」
「元気なくしてるかと思ったら、そうでもないし。よかったわ。ワンコインをぎゃふんといわせてよ」
「分かってるって」
 芳江は加代とビールジョッキを高く上げて乾杯した。
 
 春樹は盆休みにかこつけ喜左衛門を、思い切って一週間休業することにした。
そして家族旅行に出ていた。息子達は既に幼稚園児となり、いくぶん手がかからなくなっていた。
 夕食も終え子供達は寝静まり、景子は春樹の酌を受けて冷酒を飲んでいる。
「子供ができてから初めての旅はどうだい?」
「いいわね。毎日同じ繰り返しで、気分転換したいって思ってたし」
「だろう。だからいってたんだよ。旅に行こうって」
「あなたの気持ちは分かってたけど、子供達と一緒だとお家にいるのと同じだと思ってたのよ。生意気なこというけど、最近はいうことも聞いてくれるようになったし」
「金なんか遣いきれないぐらいあるし、海外だってどこだって、行けるじゃないか」
「そういう気分になったら、いうわ。今頃梶山さん夫婦はてんてこ舞いしてるんじゃないかしら」
「そうだろうな。でも、冬の暇なときは適当に休んで旅もしてるからな」
「それも、あの人たちにしたらお仕事よ。どういうお料理を出してるのかとか、私達みたいに遊びできてるのと、違うと思うわ」
 景子は夫の苦心を分かりながらも、梶山夫婦の頑張りを褒め称えようとした。
「そういう見方をしてやると、梶さんも波流美さんも報われるってもんだな」
 その翌朝、宿の朝食は大食堂でのバイキング形式だった。
 四人の子供達は案外おとなしくしているが、ときには甲高い声をあげた。それを気にした景子が、隣り合わせの夫婦に申し訳なさそうに頭を下げた。
「うるさくて済みません」
「いいのよ。私達にも同じ年頃の孫がいるし。あの子達も、どこかでこうしてはしゃいでるのは同じですから」
「そうだな。それにしても四つ児とは、ここまで大きくなるの、大変だったんじゃないですか」
「そうよね。それに、皆そっくりで、可愛いったらありゃしない」
「有難うございます」
 長男の喜左衛門が椅子から降りようとするのを、春樹が叱りつけた。
「ちゃんと食べないと駄目じゃないか。喜左衛門はお兄ちゃんなんだぞ」
「皆同じ年なのに、なんで僕がお兄ちゃんなの?」
「そういう生意気いわないで、食べるときは食べるの」
「喜左衛門なんて、古風な名前なこと」
「商売やってて、その屋号を長男につけたんです」
 そういって春樹は春雄、万蔵、越男と他の三人の名前もいった。
「いい名前ばかりですな。近頃じゃ芸能人の名前をつけたりする風潮があるっていうのに、皆個性的だ。よかったら一緒に飲みませんか?」
「朝からそんなに飲んで、大丈夫?」
「連泊するんだし、どこに行くあてもない旅じゃないか。ビールを飲んでるようだし、子供はうちの婆さんと奥さんに見てもらって、どうですか?無理にとはいいませんが」
 春樹夫婦も骨休みが目的の旅で、今日もこの宿に泊まることになっていた。
「よければこちらにどうぞ。私がそちらに行きますから」
 そういって老婦は子供達に近づくと、一人一人に笑顔で挨拶をし始めた。景子は自分の母より少し老けた婦人と、子供のことで話が合うようだった。
 柔和で温厚な顔立ちの石塚老人は飲ませ上手で、たった今知り合った春樹が仕事のことまで話している。
「どんな商売にも波はありますね。私は会計士だったんで、バブル狂乱で自分を見失った人たちをかなり見てきました」
「うちはバブル景気とは縁がなかったです。地道な商売なんで。人を騙すような商売はしたくないし。かといって、このままじゃどうなるか分からない。そんなことを考えると、憂鬱になってきます」
 コンビニやスーパーの経営は過当競争で大変だということは、石塚にも分かっている。それを統括する立場の春樹が、これから二転三転するのは想像がついた。
「なんか、辛気臭いこと話しちゃったみたいで、すいません」
「いやー。そんなことないですよ。あなたはまだ若いし、この先挫けるようなことが万が一あったとしても、奥さんとあの子供達のために頑張れますよ。別に頑張らなくてもいいって、思うときもあるんですがね・・・。私達の世代は何がなんでも我武者羅にやってきたもので、他人様にもついそういってしまう。悪い癖ですな」
 石塚はそういって苦笑しながら、春樹にビールを注いだ。
「仕事は生きていくために。人生は仕事のためにあるんじゃないって、この年になって思うんですな。やり直しできるものなら、もう一度生まれ変わってやってみたいもんです」
 仕事は生きていくために。人生は仕事のためにあるんじゃない。
 名言だなと思う春樹だった。
 
 加代は風越に戻ってきて旧知の人間ほとんどと再会したが、なにか物足りない思いが心の中で渦巻いている。それがなんだか分からないまま仕事をしだしたある晩、芳江から天麩羅屋に行ってみればといわれた。
「あれー。外国行ってたんじゃなかったの」
「ここの天麩羅食べたくて、帰ってきちゃった」
「嬉しいこといってくれるじゃないか。で、旦那さんは?」
「別れてね」
「そうかい」
「小母さん。まだ買い物から帰ってこないの?」
「そうなんだ。カボチャ買ってこいっていっただけなのに、カンボジアまで行って、畑で種撒いてんのか何してんだか・・・」
 相変わらずのおとぼけぶりに、二人はそれぞれの気持ちを探るような感じで苦笑いした。
「はいよ。キスなんて散々して飽きてんだろうけど」
「からっとしてて、美味しい」
 店の主は相変わらず駄洒落の連発で、それが加代には懐かしく感じられた。気取りがなくいつも飄々としてるそんな主を前にすると、気持ちが和んでくるのだ。
「これが今の女房代わりでね」
「えー」
 主の年が正確にいくつだか知らないが、五十は越えてると思える。その彼が紹介した女性は、まだ二十代半ばにしか見えない。
「あたしより若く見えるんだけど・・・」
「女房と畳は、新しいほどいいっていうだろう」
「新しすぎ」
「ま、そういうなって。人生、楽しみがなけりゃ仕事にも身がはいらないし」
生き甲斐は人それぞれで十人十色だけど、この小父さんは女性なのか・・・。あたしは男は当分いらないけど、なにか見つけなきゃと思う加代だった。
「人生。色気がなくなったらお終いよ。そのために働きもするってもんだ」
「そんなもんですかね・・・」
 それにしてもこの主が若くて美人な女性をどこでどう手なずけたのか、詳細を聞きたくなる加代だが、女性を前に聞ける訳もなかった。手酌で飲む機会が増えそうな加代だった。
 
 野瀬は今後田舎っぺの加盟店になる者には契約期間を設け、中途解約した場合には違約金を徴収してはどうかと春樹に提案した。それに対し、春樹は反対した。
「ワンコインに寝返りを打つっていうのは、田舎っぺに魅力がないからかも知れない。それを一方的に縛り付けるのは、どうかな?それより、田舎っぺでずーっと、やりたいって思わせるようにしよう」
 ワンコインの出店は雨後の筍のような勢いだった。それも田舎っぺの近所が多く、野瀬としては打開策を見つけられず頭を抱え込んでるのだ。
「このままじゃ、倒産を待ってるようなもんだ」
「いざっていうときは、それもしょうがないだろう」
 野瀬は苦し紛れにいったのだが、春樹は本音でそう考えてるようだった。
「そうなれば、田舎っぺどころか、風雲舎だってやっていけなくなる」
「だろうな」
「会長だったら、もっと、真剣に事態を考えてくれ」
 田舎っぺが快進撃を続けたのはワンダラーのそばに出店し、値段の安さとその新しい店舗スタイルで客を集めた。それが今は逆の立場になり、ワンダラーの系列のワンコインにその仕返しを受けている。ワンダラーが受けた衝撃がどういうものだか知らないが、野瀬は睡眠不足が続き苛立っていた。
「野瀬。もっと気持ちをおおらかにしたほうがいい。今の状態じゃ、解決できることもできなくなるぞ。奥さんと一緒に温泉でも行ってきたらどうだ」
「何を暢気なこといってるんだ」
「野瀬が一生懸命考えてるのは分かる。でもな、考えても結論が出ないんだろう。それで、お前は苛々してる。それじゃ、奥さんだって、可哀想だ」
「私はそんなこと、少しも思ってません」
「夫婦のことだ。お前には関係ない」
「関係あるんだよ。いいか。よく聞け!」
 春樹は野瀬の胸倉を絞り上げるようにしていった。
「お前の子供は明るいのに、お前達夫婦が喧嘩してるって、泣いてんの知ってるか!女房子供を泣かせてまで仕事してくれなんて、俺は一度も頼んだことはない。社長のお前がそんなだから、家族だけでなく社員まで暗くなるんだ。田舎っぺの社長がうろたえてるなんてワンコインが知ったら、連中はここぞとばかりにもっと叩いてくるんだぞ」
 春樹の口調はきつく、野瀬の襟元をつかんだ手を緩めない。
 会長と社長という仕事上の立場でなく、友人同士だからこそいってるのだと思う野瀬結衣だった。
 春樹の怒鳴り声で、景子が駆けつけた。
「やめて!子供達が見たらなんて思うの?他人の子供を預かってる身なのよ」
 その言葉で、春樹が手を下ろした。
「悪かった」
 野瀬健太郎は春樹にそういうと、結衣の肩を抱いて部屋に戻って行った。
「やりすぎよ」
「ああでもしないと分からないんだから、しょうがないだろう」
 
田舎っぺのトップページが様変わりした。新商品の紹介に続き社長の挨拶文か掲載されている。
創立三年にして加盟店は千軒以上に達しました。
加盟店主ならびにその関係者に深くお礼を申し上げます。
当社としましては今後とも加盟店とその地域の皆様の幸せを祈るべく精進していく所存です。
そのために商品開発と仕入れ確保に努めていきます。
また、今後は契約料として十万円を徴収いたします。
契約料は今回の一回限りとします。
契約続行を希望されない場合は不要とし、その時点で当社からの仕入れをお断りする次第です。
 徴収期間は本年十二月十日とさせていただきます。
尚、新規加盟店様におきましては二年後の更新時に徴収するものとします。
田舎っぺの加盟店としての信用料だとお考えいただければと思います。
 
これを見た青木と吉村がほくそ笑んだ。
「格好つけていい子ぶったことやろうったって、そうは問屋が卸さないってことだな」
「ですね。それにしても、こんなこと、よく掲載しますよ」
 ワンコインの二人はそう思ったが、田舎っぺの大部分の加盟店主は違う反応を示した。
 馬鹿儲けはできないが、年金だけではまともな老後を送れない者が多い田舎っぺの店主。十万なら安いものだと、ほとんどが即日振り込んでいる。
 そんなこととは知らず、ワンコインは相も変わらず加盟店募集に精を出していたが、秋口にかけてその数はいっこうに増えなかった。
 
田舎っぺの総会が名古屋で開催されていた。
店主達は久しぶりに会う会員と酒を酌み交わして盛り上がっている。
「老いぼれの爺に商売なんかできるかと思ってたのに、何から何まで教えてくれてここまできた。孫達に小遣いもやれるようになったし、たまにゃ温泉も行ける身分だ。これも田舎っぺのおかげよ」
「そうですよ。中にはワンコインに寝返ってるのがいるっていうけど、後で痛い目に遭うんじゃないかな。外資系なんかに、私達の気持ちなんか分かりっこないし」
「契約料だって餅つき機を買う資金だっていってるし、ワンコインみたいに本部のものになるのとは訳が違う」
 米の粉で餅をつくったりパンを焼いたりできる機械を試作させていた野瀬は、それで新商品も開発していた。それをこの総会で話したのだった。冬は温かい物が売れるのが当然で、おでんや肉まんなどはどこでも販売している。それだけでなく、つきたての餅にベーコンを巻いた物とかチーズをはさんだもの。雑煮にしても元来ある和風出汁のではなく、ラーメンの中華スープで食べる。
 政府が減反とはいっても依然として作付けしている農家は多い。その仕入先も確保している野瀬だった。
 それで店主達はさすが田舎っぺだと感心してるのだった。
 
 秋も終わり年末になると、田舎っぺのホームページには総会の報告が記されていた。それによれば、加盟店すべてから契約料が振り込まれたこと。また、新規加盟店が増加してるとも書かれていた。佳い新年を迎えるようにとも。
 ワンコインでは秋口から契約解除する加盟店が日に日に急増し、春から加盟したほとんどが脱退していった。それで頭を抱えていた青木が血相を変えた。なぜなら、半年以内に契約解除した場合は違約金を払わずに済むという契約内容だったからで、その契約を得るのに一店につき六万円ほどの営業費をかけていたからだ。その店舗数が三百ちかかった。それだけでなく、既存の店舗までが中途解約をしないまでも、仕入高を押さえていた。さらには卸値をダンピングしていたことも重なり、損害はかなりの額に上りそうだった。
 吉村は帳簿操作で三千万ほどの金を手にして消えていた。 
田舎っぺにしてやられたと思うと同時に、身内からも裏切られた青木は顔面蒼白の年末を送った。表裏比興の者とはよくいったものだと、妙に感心しながら安酒を煽る彼だった。
 
風雲舎の子供達すべてが実家に戻った。それに合わせて万三郎は旅に出るといって留守にした。
年末から客を取らない風越荘では、梶山夫婦が商売のためによその宿を泊まり歩いていた。
小椋のその一角にいるのは村井と野瀬の家族だけだった。
野瀬健太郎は心地のいい正月を迎えた。
「ワンコインが三月で閉鎖するらしい。野瀬。弱ったように見せかけて逆襲に出るなんて、お前は真田昌幸みたいな奴だな」
「誰だ。それは?」
「歴史は面白いぞ。とくに戦国時代はな」
 そういって高らかに笑う村井春樹だった。

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梅雨も明けそうな気配で、今日はかなり暑くなるそうです。

で思い出す曲を、
ユーチューブから集めてみました。
間違ってもサザンやチューブの曲などありませんので悪しからず。
懐メロの名曲ばかりですよ(@°▽°@)

ミスターサマータイム


想い出の渚


白い珊瑚礁


17才


の出来事
 

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赤飯
 
雨の銀座の街角で ひとりぽっちで待ちました・・・
 雨に濡れながらたたずむ人がいる 傘の花が咲く土曜の昼下がり・・・
 あなたを待てば雨が降る 濡れてこぬかと気にかかる・・・
 雨の外苑夜霧の日比谷 今もこの目にやさしく浮かぶ・・・
 
 そんな昔の流行歌を思い浮かべては口ずさむ梶山三郎の目は、激しく降り続く雨で濡れる窓を見ている。
「お父さん」
「うん。どうした?」
 岳雄はドアを開けたが、父にどう話そうか迷っている。
「何だ。何かいいたいことがあるから来たんだろう」
「ね人間て、何で人を好きになるのか
「何でかな・・・。お父さんにも分からないけど・・・。それより岳雄。酒は飲んだことあるか」
「ないよ」
「暑いからビールでも飲んでみるか」
 三郎は岳雄をキッチンに連れて行った。
「どうしたの二人揃って」
「岳雄とビールでも飲もうと思ってね」
「駄目よ。まだ高校生なのに」
「いいじゃないか。俺だって岳雄と同じ年頃には飲んでたの知ってるだろう
「父親のあなたがそんなこといったら、示しがつかなくなるじゃないの」
「ま、今日だけは大目に見て欲しい。男同士の話をしたいんで
 三郎は岳雄にビールを注ぎ、息子が口を開きやすくなるように話し出した。
 岳雄は初めて口にする苦い液体を噛みしめるように飲み下した。
「どうだ。美味いか」
「苦いだけだよ」
「それが大人の味ってもんだ」
 武雄は注がれたビールを勢いよく飲んだ。そして、胸の内をぽつりと話し始めた。
岳雄はクラスに好きな女子がいて、その彼女と一緒にいたいがため大学を一緒にするかどうか迷っている。彼自身としては偏差値が高いので国立を目指したいが、彼女のレベルでは私立しか行けないという。それも地方の大学で、離れ離れになってしまうとも。
「どの程度の付き合いなんだ。AかBか。それともCまで行ってるのか?」
「おかしなこと聞かないで」
「お母さんのいうとおりだよ」
「そうはいうけどな、これは大事なことなんだ。女っていうのは初めての男のことを忘れないっていうからな」
「いえないよ」
 詳しく話そうとしない武雄にいらつきながらビールを飲んでるうち、三郎はソファーでうつらうつらしている。
 
 三郎は銀座でビル掃除のアルバイトをしていた。夕方六時から八時までの二時間で日給五百円だが、毎週月曜日に給料をもらう。その金で有楽町のフードセンター二階にあるアメリカーナというコンパに、アルバイト仲間と飲みに行くのが楽しみだった。
「銀座でバイトしてるんだし、いい女見つけようぜ」
「そうだな」
「范文雀みたいなのいないかよ」
「お!あれはいいな。すっごい色っぽいし。でも、やっぱり小山ルミだな」
「勝手なこといってるよ。どっちにしたって、相手にしてくれやしないのによ」
「それいっちゃ、おしまいだぜ。そういう梶山は誰なんだよ」
「俺か!俺は藤山陽子だな」
「誰だよ?それ」
「知らなきゃいいんだ」
「ちぇ。人が好きな女にけちつける癖に、自分のことはいわないのかよ。きたねー奴だな」
 そういわれようと、梶山三郎はそれ以上藤山陽子についてのことを話そうとしなかった。こいつらにいったところで、あんな年上の婆のどこがいいんだといわれるに決まっているからだった。何しろ彼よりひとまわりも年上の女性なのだ。だが、彼には女神のような存在だったのだ。
「ま、俺はちょっといい女と知り合ったし。和田と佐藤も、早く見つけるんだな」
「本当かよ。どんな女だよ」
 どんなもなにも、三郎には説明できなかった。まだ三回しか会ったことがなく、それも立ち話程度しかしてないのだ。
「とにかく、いい女だよ。クラスの奴らとは比べもんにならないぐらいにな」
「うまいことやりやがって」
 
 梶山の家庭は経済的にゆとりがなく、三郎がアルバイトで稼いだ金で授業料を支払っていた。そのアルバイトもビル掃除だけでなく、近所の子供達に宿題を教えたりもしていた。
 そういう状況でも小学校当時に見たテレビドラマ「青春とはなんだ」に憧れ、高校の部活ではラグビー部に入部した。ひょろっとして背は高く足が速かったこともありそれでラグビーをやっていたが、バイトが忙しくあまり参加できなかった。
 中学時代の梶山は五段階評価で英語だけが唯一の四で、他はすべて三という成績だったが、入学した高校では、他の中学から来た者の偏差値は高いものの彼がいた中学に比較するとかなりレベルが低かった。クラスではいつも五番以内の成績だった。
 そんなことで女子からの人気もまずまずで、登下校時など梶山を見つけると一緒に歩くのもいたし、それとは逆に遠目で見るだけの女子生徒もいた。
 その中で席が隣で家が近所だった片山美樹は、目がくりっとした可愛い女子だった。入学した夏休みに彼女の自宅に招待された梶山は、彼女の姉と母から大人びてるといわれ、娘のことを宜しくとまでいわれた。
 そんなこともあってか近所の多摩川を散歩しては、美樹の膝枕で昼寝をする梶山だった。
「好きなのいるか?」
「いるよ。どうして?」
「いやぁ。いなきゃキスしたかったけどな」
 美樹は自分の太股の上で仰向けになって目を閉じてる梶山を見た。
 暇がないといってはラグビー部に顔を出さない彼だが、その顔は日焼けして黒かった。
噂では、朝早くグラウンドで走ってるということを聞いたことがある。
部員数が十人しか集まらず、試合間近になるとサッカーやバスケットから部員を借りてくるという、廃部間近なラグビー部のために自主訓練をしているのだろう。
「何だ。好きな奴がいるのに、キスしていいのか?」
 美樹の唇を感じていった。
「好きな人は、梶山君だし」
 そういわれた梶山は美樹を抱き寄せ、彼女の唇を押し開いてキスした。
 晩秋の釣瓶落としで夕焼けも闇に染まり、二人さえも漆黒に変えていた。
「煙草臭いよ」
「カルピスの味だろう」
 美樹が煙草はやめなよというそばから、梶山がハイライトに火をつけた。
「吸ってみるか?」
 どんなものだか一口吸うと、咽返る美樹だった。
「こんなの美味しくないよ」
「酒も飲んだことないんだろうな」
「ないよ」
「今度飲みに行こう」
 
 そんな美樹と適当に付き合っていた梶山だが二年生最後の期末テストも終わり、早めにバイト先の銀座に行きスマートボールをやったら勝ちまくった。ラークやケントなど普段は買えない洋モクやチョコレートなどの景品をごっそり持ち、チケットのプレイガイドに行った。
 派手なメイクの女がカウンターに一人でいた。
「ある愛の詩はいつからですか?」
「来週からです」
「一枚四百五十円か・・・」
 二枚買うには持ち合わせが足りなかった。
「とっておいてもらうってことできないですか?」
「それはちょっとね・・・。いいわ。そのラークを私が買うってことでどう?」
 そんなことで梶山はチケットを手にした。
「デート?」
「そういう相手がいればいいけど」
「持てそうなのに、彼女いないの?」
「バイトだクラブで忙しいし」
「大学は楽しいでしょう」
「僕、高校生だけど」
「へー。随分大人びて見えるけど」
「よくいわれるけど、そうかな・・・」
「二十歳ぐらいに見えるわよ」
「もうすぐ十八になるけど」
 グレーの細身のスラックスにオックスフォード地のボタンダウン。それにネイビーブルーに白いストライプが入ったカーディガンを着ている。
「お酒は飲むの?」
「ジンライムとかは」
「よかったらこれから飲みに行く?驕るわよ」
 十朱幸代のような顔立ちで目はくっきりし、男なら誰しもが振り返るような美人だった。その女性から飲みに行こうと誘われ、断る梶山ではない。
 梶山はバイト仲間達と行くコンパに、能登光子という女性を案内した。
「フードセンターにこんなお店あったのね。目の前にあっても知らなかったわ」
 日毎陽が伸びていく二月末の有楽町の雑踏を見下ろせる店内。丸椅子に座ってそんな窓外に視線を落としている、能登光子の顔をバーテンが盗み見している。
「遠慮しないで何でも頼んで」
 貧乏高校生の梶山たちがここに来てつまみを頼むといえば、チーズとクラッカーやサラミなど安い物ばかりだった。
「じゃ、チキンバスケット」
「それにキッスチョコお願いします」
 梶山はジンライムを舐めるように飲んでいたが、能登光子に進められるままお代わりをしていき、電車に乗る頃には気持ち悪くなっていた。
 
 梶山がどうしてるかと聞かれた美樹は、部活とアルバイトで忙しいみたいと姉に答えた。
「会ってないの?」
「毎日話してるよ。席が隣だし」
「それは学校でしょう。外でよ」
「そういえば、外で会ってないかな」
「誰かと付き合ってるんじゃない」
「どうして?」
「美樹はまだ子供だからいっても分からないけど、あの子は大人だしね」
 姉が何をいいたいのか知ってる美樹だった。
その梶山から電話があった。鎌倉へ行かないかということで、美樹は買ったばかりのブラウスにカーディガン姿で家を出た。
北鎌倉から八幡宮を経由し、大町から小坪トンネルを抜け正覚寺に着いたとき、江ノ島や富士山が見えた。
「綺麗」
「夕焼けならもっといいのにな」
 八キロばかり歩いたせいか、美樹は疲れていた。
「足が痛い」
 ベンチに座ると、痛みが和らぐと同時に眠気に襲われそうになる美樹だった。
「眠くなってきたよ。たまには梶山君が膝枕してよ」
 ミニスカートだが周りには誰もいないので美樹は足を伸ばし、ベンチの端に座らせた梶山の膝に頭を乗せた。
「気持ちいいか?」
「うん」
「おっぱいが盛り上がってる」
「エッチ」
 ブラウスの合わせ目から黄色いブラジャーが見え、その周りの白い肌が息をするたびに上下に動いている。
「ホテル行こうか?」
「駄目だって」
 美樹は起き上がった。
「好きなんだから、いいだろう」
「だって・・・」
 といって、出てくる前に姉がいってたことを思い出す美樹だった。
「梶山君。誰かと付き合ってないの?」
「いないよ。そんなの」
「じゃぁ、経験あるの?」
「ないな。だから、童貞を美樹にあげようと思ってな」
「あたしだってバージンだよ。上手くできる?」
「そんなの、やってみなきゃ分かんないだろう」
「そうだけど、なんか、恐いし」
「あと一年で卒業だろう。そしたらどうなるか分からないし、俺としたら美樹と経験できたらなって」
「あたしもそうだけどさ・・・」
「バイトで貯めた金もあるし、酒でも飲もうか」
「いいよ」
 この帰り、二人は男と女になった。
 
 能登光子はチケット売り場の仕事を辞めることにした。有楽町よりも近い入谷のガゾリンスタンドで、事務をやることになったからだ。そのことを梶山に話した。
 驚きを隠せない梶山は喉が熱くて、息苦しくなった。
「どうしたの?」
「もう、会えないの」
「黙ってたけど、結婚してるし。それに、あなたより5歳も年上なのよ。いつか、手紙書くから」
 いつものコンパを出て駅前の交差点で信号待ちをしてる間、梶山の目から大粒の涙が溢れているのを見た能登光子は彼を抱き寄せてキスした。
 彼がこんなにも自分のことを思っていてくれたかと思うと、キスをしたくてたまらないのだった。
「もう、泣かないで。手紙書くから」
 その手紙には次のようなことが書かれていた。
 
 あなたが見せた純な涙。
 私には衝撃でした。
こんなに思っていてくれたかと思うと嬉しかったけど、私は悪い女。
あなたは男。
女に負けていては駄目。
あなたのことは一生忘れません。
 
 肩を揺すぶられた三郎が目を覚ました。
「寝込んでたのか」
「三十分ぐらいはね。それより、岳雄に刺激的なこといわないで」
「岳雄は?」
「今日は友達の家に泊まるって出て行ったわ」
 顔を洗うと、三郎はまたビールを飲み始めた。
「美樹」
「え?」
「俺と一緒になって幸せか?」
「いまさらそんなこと聞いて、どうする気?」
「俺は美樹と結婚して、幸せだぞ」
「嘘いってる。あの年上の女性のこと、まだ忘れてないんでしょう。寝言で能登さんて、いってたわよ」
「そんなこといってたか・・・」
「女だけじゃなく、男だって昔の女性のこと覚えてるのね」
 二人が結婚して二十年。
 三郎は頭髪に白いものが出始めているが、会社内の同好会ではラグビーを続けていて、学生時代と変わらない体形を維持している。
 美樹は四十歳になっても老けることなく、顔の皺もほとんどない。二十代に比べればいくらかふくよかだが、それがかえって色っぽくなっている。
「久しぶりに、外で食事するか」
「お米研いだのに?」
「美樹だって、たまには楽したいだろう」
「有難う。じゃ、着替えるわね」
 ノースリーブのミニのワンピースは目にやさしいグリーンで、ウエストはかなりくびれている。それにラメをあしらった白いカーディガンを羽織ると、いつものティーシャツ姿の美樹とは見違えるほど艶やかだった。
「俺はコットンスーツでも着るかな」
 三郎は高校を卒業し稼ぐようになると、コンポーネントステレオを買い込んだり服にも金を遣った。その当時流行ってたコードレーンのスーツをまだ着れるのだった。
「古いのがかえって、モダンに見えるわよ」
「アイビールックは永遠だな」
 二人は思い出の銀座へ出た。
「銀座も変わったわね。高校生のとき、あなたに連れられて来たときは日劇があったのに」
「映画館も少なくなった。スマートボールなんてなくなったし」
 雨上がりの銀座は黄昏て灯ともし頃だった。
 ビアガーデンは風が吹き、アルコールで暖まった身体に心地いい。
「さっき岳雄が、お父さんのいう同級生の女子って、お母さんのこといってたんじゃないかって」
「あいつ。気付いてたのか」
「何で結婚したのかって、聞かれたことあったから話したのよ。それも最近ね」
「そうか・・・」
「そうしたら、初体験はいつだって聞くのよ。そんなことどういっていいか分からないから笑って誤魔化したけど」
「あいつ。多分まだ童貞なんだろうな」
「勉強ばかりしてて、女の子と付き合う暇もなかったし。それが半年前、デートするっていうから吃驚したわ。多分その子と付き合ってるんじゃない」
 そういう美樹の顔は年に似合わず、恥じらいを浮かべている。
 
 翌朝、岳雄は十時過ぎに帰宅した。
「お帰り」
「朝ご飯食べたの?」
「頭ぼーっとしてて、眠いからいらない」
「そう。ゆっくり寝るといいわ」
 美樹がにこやかにいう。
「岳雄。昼は赤飯にしような」
「なんでもいいよ」
 息子が二階に上がっていくと、三郎と美樹は声をあげて笑いあった。
「可愛い女の子だったじゃない」
「上手くできたのか、聞いてみたいもんだ」
「厭なこといわないでよ」
 昨夜、三郎夫婦は銀座から帰る途中、岳雄が女性とホテルに入って行くのを見てしまったのだ。
「初体験か・・・」
 夏だといのに空は青く濃かった。
 二十年以上も昔のことを思い浮かべながら、三郎は庭の椅子でハイライトを吸った。
「あのホテル。なんだか刺激的で燃えたわね」
「うん。高校生に戻ったみたいに、美樹を抱けたよ」
「たまにはラブホテルもいいもんだ」
 来週も行ってようという美樹だった。
 岳雄は別れたばかりの加奈美の顔を思い出していたが、あっという間に深い眠りに落ち込んでいった。
「今日は岳雄が男になった記念日だ。赤飯焚いて祝おう」
「女の子じゃなくてよかった。女の子だったら、心配で気が気じゃないわ」
「そりゃそうだな」

                完
 
                      
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スレッドテーマ:小説・文学 短編小説
花の命は短くて・・・

花なら植え替えれば、やがて花を咲かせ実を成らすこともできるというもの。
だが、人の命はそうかいかない。

先週から始まったTBSの「Tomorrow〜陽はまたのぼる〜」という病院を現場にしたヒューマンドラマ。
経営再建を迫られた市民病院が舞台で、合理化に徹しようと自治体は外部から遣り手の医長を招聘する。
それは高慢な女医師役の緒川たまきで、儲からない内科や小児科などの科目を切り捨て、金になる脳外科専門の病院にしようと提案するが、院内で反発を受ける。
その市民病院再建のプロジェクト担当者である竹野内豊が、彼女の留守中に運ばれた妊婦に帝王切開の手術をしてしまう。
否、正確には看護師役である菅野美穂がメスを入れ始めたのを、見かねて執刀したという設定。
竹野内豊は医療ミスで患者を死なせたことで医師を辞め、市役所勤務をしていたのです。
ここまでが先週の放送ですが、見事に乳児を取り上げ母子共に健康というストーリーでした。

そして今回は、菅野美穂の妹役である黒川智花が脳腫瘍だかで受け入れ先のないままたらい回しにされるところを、竹野内豊がこのままでは死んでしまうと緊急手術をすることに。
またしても緒川たまきが留守中のことだったが、彼女に携帯電話で指示を仰ぎながら、そして彼女がやがて戻ってきて手術は無事成功したという内容でした。

2回ともできすぎた話で、竹野内豊があまりにも格好良すぎるではないかと思うものの、ま、あくまで虚構、つまりフィクションですから・・・
この竹野内豊の配役を「白い影」で医師役を演じた中居正広がやったなら、いかにも嘘くさいと思う私だが、竹野内豊がやるとそうとは思えないまま、引き込まれるように見終えてしまった。

多くの人間が見聞するメディアの代表格であるテレビ。
得てして的外れなことを良くやっている。
旬なタレントとして小栗旬なるものをイケメンとして囃し立て、彼を格好いいと各局が一様に吹聴する。
それを見る者はそうだとばかりに同調するのが多いようだが、私にしてみたら何をか況やである。
彼をイケメンというのはまだ許せる。
だが、間違っても格好いいなどといって欲しくはない。
カワハギみたいなおちょぼ口でたいした芸歴もない小栗旬。
そういう人間をメディアがこぞって賞賛する裏には、胡散臭いものがとぐろを巻いているようでしかたない。

イケメンの定義が何であるかなどどうでもいい。
それに小栗旬を当てはめるメディアも、一企業だからしかたのないことかもしれない。
だが、そんないい加減なことをしてると、テレビ離れは今以上に加速するだろう。
そのいっぽうで「Tomorrow〜陽はまたのぼる〜」という人々に感動を与えるドラマを作っているテレビ。
なんだか、頭がおかしくなってきそうです。
この記事を書き始めようと思ったことはなんだったのか?
それさえも分からなくなってきました。

税金で賄っていた公立の医療現場は独立採算を求められ、今はとんでもない事態に陥っている。
そこに従事している医師や看護師はこれまで以上に大変でしょう。
それで、派遣医師が登場する始末だ。
後期高齢者医療などという悪名高い制度を確立させた政治屋どもは、このドラマをどう見ているのだろうか・・・?

文章中の登場人物の敬称は略させていただきました。

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5 画策と希望
 
 春樹は喜左衛門の売上げが落ち込んだことについて、大して落胆していない。
 美紗緒は勿論のこと他の従業員にしても、皆一生懸命仕事に精を出しているからだ。それに彼自身生活に困ってることもないし、風雲舎の赤字分を補填しても喜左衛門が赤字になることもない。その風雲舎に五人も新居者が入ったし、来年の決算は何とか黒字になりそうな気配だった。
 田舎っぺは野瀬が切り盛りしてるが、このところワンコインが反撃に出てるらしい。それが気がかりといえば気がかりだった。
 
 青木はワンコインの加盟店が目標の三百を大きく超えたことに満足していたが、今度こそ失敗しないように加盟店のオーナー達へのご機嫌を取るようにした。
 卸値を期間限定で一律十五パーセント下げたのだ。
 輸入物食材の仕入原価など安いものばかりだし、会社自体の利益が極端に落ちることもない。それより、加盟料五十万円でもやってみたいという人間がかなり増えていることで、その金額が馬鹿にならない。
 吉村は加入者を増やす経費として一軒につき二万五千円の経費を使っているが、ネットで募集した人間や仲間達の口利きなどで、その半分近くをリベートとして懐に入れている。
 そんなことなど顔に出すこともなく、吉村は平然として青木にいってる。
「田舎っぺの千件にはまだ追いつけませんが、もう少しで五百ですよ。年内に何とかあと二百ぐらいは増やしたいですね」
「そうしてくれると、俺の立場も浮かばれるってものだがな」
「契約とるのにも色々とかかるんで、あと一万円上乗せして欲しいっていうのが多いんですけど、どうですか?」
「いいだろう。その代わり、一ヶ月に三軒以上契約した者には三万五千で、それ以下は今までどおりだ」
「分かりました」
「その代わり、支払い明細はきちんとしてくれよ」
「当然です」
 吉村は商品開発などすることなく、加盟店拡大のためだけに専念していた。
 
 コンビニ業界は新規出店数が伸び悩む中、逆に閉店する件数が多くなるという状態だった。それで単独の店舗ではなく病院や大学とかオフィス内に併設したり、あの手この手で利益確保に奔走している。それだけでなく、ファーストフード店を同一敷地内に誘致したり、あらゆる手段を講じていた。
 最大手の本部では約一万の加盟店を持っている。
 その店舗の一日あたりの売上げ平均は四十万円ともいわれている。その売上げは当然本部が供給した商品ばかりだ。加盟店はそこからロイヤリティーとして約四十パーセントを収める。さらに仕入れ代金を払うのだから、本部としては絶対に儲かる仕組みになっている。
 だが、それも昔なら笑いがとまらなかっただろうが、今は競合店がひしめき合い、安穏としている場合ではなかった。それだけに他店に負けない商品開発は勿論のこと、仕入れ値を少しでも安くできるところを捜し求めているのだ。それだけでなく物流コストも最大限切り詰めるよう、いろんな改革に取り組んでいるのだ。
 
 そんなことを話題に飲みながら話している客に、春樹は蕎麦を運んだ。
「お待ちどうさま」
「万吉爺さんに負けない蕎麦打ってくれたかい」
「爺ちゃんにはまだ敵わないかな」
「そりゃそうだな」
「あの爺さんが打った蕎麦は腰があるだけじゃなく、味があったな。季節によって喉越しが変わるっていうか。ま、季節によっちゃ蕎麦粒の味も変わるから当然だけど、それだけじゃない、何かがあったな」
 万吉がその日によって、水の加減や打ち方を工夫していたことは春樹も知っている。だが、もう亡くなってしまった万吉から教えを乞うことはできず、春樹は教わった記憶を手繰りながら打っていた。
「それよりな、うちの近所にワンコインできたぞ。今度はグレードアップしたメニュー出してる。肉の量を増やしたダブルハンバーガーとかいってたな。それにコーラみたいなドリンク。紙コップに注いでくれるんだけど、それで二百五十円だって」
「へー。敵もさるもんですね」
「うかうかしてると、田舎っぺだって出し抜かれちゃうぞ。五十万だった加盟料を三十万に下げたっていうし」
「さすが、新聞記者」
「変なことに納得する奴だな。関東甲信越だけじゃなく、関西地方にも支社を出したっていうし、年内には山陰や四国にも店舗拡大を計るってよ」
「うちとはやりかた違うから。ま、今はお手並み拝見ってところかな」
「余裕勺々って奴だな」
「そうじゃないけど、田舎っぺは加盟した店主の人に儲かって欲しいっていう思いで始めてるし、ワンコインが加盟店増やそうと、関係ないってことかな」
「そういうところは爺さんに似てるのに、蕎麦の味は違うな」
「あたた。それをいわれると、辛い」
「さて。喜左衛門の世直しに同調して、早く帰るか」
「それがいい。たまには子供と風呂にでも入るとするかな」
「今日は五月だっていうのに、気違いみたいな暑さだったしな。俺は子供に背中を流してもらうか」
 春樹以外に残ってる従業員は二人で、その一人が暖簾を中に入れたのを見た客達がそういって立ち上がった。
 
 春樹は帰宅するとできたての温泉に入った。
 露天風呂からは星が見えるが、冬に比べるとその数はかなり少ない。
「昔は夏でも遠海から星がよく見えたっていうのに、これも温暖化のせいか」
 万三郎は湯で顔をしごくようにした後いった。
「温暖化もそうだし、空気自体が濁ってきてるんだろうな。中国から流れてくる風はかなり酷いっていうし」
「春先の黄砂の回数が、今年は凄い多かったっていうし」
「中国は昔の日本がやってきた高度成長真っ盛りだけど、バブルはじけたらどうなるのか?」
「それは考え物だな。中国製品なしに、今の日本の生活は考えられないからよ」
「田舎っぺにも、毎日中国製品の売り込みあるらしい。野瀬が適当にスポットで仕入れてるけど、それだ